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Fleurage―たおやかな花たち―

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Category:立夏の記憶

立夏の記憶 3 

立夏の記憶 3 (三枝編ですが薪さんも出ます、ちょっとだけ)




「140号事件ですが―」
「‥ああ」
「県警には手に負えないようです。
どうします?第九に回しますか?」
「‥‥」
「長官」
昨日からずっと考えていた。
東野官房長が何故今頃10年前の事を口に出したのか。
結局あれは‥犯人の逮捕には未だに至っていない事案だ。
捜査員1名、人質1名の生命が失われた。
後に残ったのは‥公判のみ。
裁判沙汰になって‥一課長と係長2名は無罪を勝ち取ったが、
全く後味の悪い‥「長官!」
「‥なんだ、まだいたのか飯沼次長」
「官房長がいないと執務に身が入りませんか」
「‥そのようだな、次長は下がってくれて結構だ」
「そうですか‥では」
蜜月関係の逆はなんて言うのか‥さしづめ『毒月』とでも言うのだろうな、
私と次長の関係も。

東野さんは‥何を考えているのか。
10年前の事案があんな結果を招いた後、法務省に私を呼んだのは彼だ。
当時彼は警察官でありながら司法の道に入り、
法務省刑事局公安課の課長の籍にあった。
私も彼の真似をして司法試験を受けパスしていたが警察に留まる道を選んで
刑事部長にまで上り詰めたが、その音楽ホールの失態を招いた責任を
とるつもりで進退伺をした折に法務省から声がかかった。
『4、5年もたてばひとは忘れる。出向してみるのもいいんじやないか?』
当時の老い先短い警視総監の送辞だ。
4、5年もたてば忘れるだと‥?!
あんたのような老いぼれが警視総監をやってるようじゃ警察機構の未来は暗い。
そう思った記憶がある。
忘れられるほど軽い命だったのか、捜査員の‥一般市民の命は。
あんたが代わりに死んでやればよかったんだ、
などと笑えないブラックなことも考えていた。
口には出さなかったが(出してりゃ今頃ここにはいないか)

しかし東野さんは私を呼んでおいて自分は古巣に戻り、
警察庁長官官房審議官へ返り咲いた。
すれ違うように‥まるで私と逢うことを避ける様に。

「長官、今日はお出かけになるとか‥」
部屋を覗いて町村秘書官が声をかけてきた。
昔の苦い思い出ばかりを引っ張り出してもネガティブになるばかりだ。
「町村秘書官、第九に行くから車を出してくれ。
それから、140号の資料を先に送っておいてほしい」

太陽光が反射する様子は‥あまり好きではない。
なんというか、額の天目のあたりがもやもやするし、眩しいし。
町を行く人々は、どこか暖かい日差しを喜んでいるようにうきうきしているように見える。
目眩のするほどの日差しがどうして嬉しいのか私には理解できないが。
少し開いていたスモークの窓をしっかりと‥閉めた。


やはり煙い相手なのだろう、第九の捜査員は例のSPもどきを残したまま
てんでに散って行った。
「私は嫌味を言いに来たわけじゃない。
140号事案の考察を警視正に聞きに来ただけだ」
「分っております。
捜査員は逃げた訳ではありません、それぞれ担当する事案がありますから
情報収集に向かったものだと思っています」
「‥構わないがね。
で、MRIは見れそうか?」
「鈍器で殴られたために陥没骨折がありますが、死因は結局
胸部の深い刺し傷が原因の失血死ですから、問題はないと」
「いつ頃データは上がってくる?」
「明日の午後には」

いつもと変わらない事務的な対応をする警視正、
彼は‥ずっとこうだったのか?‥そんな疑問を持った。
「きみは‥変わったんだろうね」
顔色を変えることもなく私の顔を見上げる。
「どういう意味でしょうか?」
「人間には節目がある。
その節目ごと少しづつひとは変わって行くだろう?
だけど自らに起きた出来事が想像を絶するほど‥辛いものなら
急激に変わらざるを得ないこともある‥それを聞いているんだ」
「表面上は変化するかもしれませんが、その心の奥深くを流れる水に
変化はありません。
自分の真理や信じるものが変わりはしませんでしたが」
「‥‥きみは強いよ。
自己否定の嵐が吹き荒れなかったのか‥?」
「自己否定と言うより‥この世界を否定していました」
モニター前に座っていたSP岡部、青木両警部はまるで背中が集音器官になった様に
背中を向けたままこっちの会話を聞いていた。

「この世の否定‥そこまで行ったか‥
そして‥?突き抜けた‥そう言う訳か」
「突き抜けて―
フォボスに激突し、戻ってきました」
‥‥彼らしくない表現だな、一応冗談のつもりか?
「あの10キロのクレーターはきみのせいなんだ」
「‥‥」
‥‥なんだ‥?
いったい、何なんだ!ニコリともしないし‥この凍えたような空気は‥
背中を向けているふたりの手は止まったままだ。
固まっているのか‥

「とにかく、データの解析を急いでくれ」
退散しようと立ち上がりながら彼に指示したが‥気になることを思い出した。

ドアに向かっていた私の後ろを警視正がついてきていたが、
立ち止って振り返った私を怪訝な顔で見つめる。
「10年前、きみは警察庁にいたね。
警備部公安課だった‥確か‥」
「‥そうですが、なにか」
「なにか‥何かってことはないんだが、気になった。
公安課で‥あの10年前の事案の情報収集に当たっていたんじゃないのかと‥
そんな気がした」
それを聞いていた青木警部が立ち上がるのが見えた。
「確かに収集していたのでしょうが‥自分にはその年の5月の記憶が飛んでいます」
飛んでいる‥?
「私にも分りません‥あの音楽ホールでの未解決事件が関係していると
思ってはいますが」

驚いた。
一致したと言う事じゃなく、彼が正直にそれを話したことに私は驚いていた。


続く

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2011/04/28 18:26 |  |  #  edit

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