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Fleurage―たおやかな花たち―

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Category:立夏の記憶

立夏の記憶11 

立夏の記憶11




その女が手にしていたもの‥
例の紛失した注射器とバイアルだ、
「なんて言ってる?」
ごく普通の中年の女性に見えるその女が
偽名だったが、佐藤彩子44歳、薬剤師。

メインスクリーンの前で説明する青木警部が振り向いて
口を開いた。
「疲れている時はよく効くから、これ‥そう言ってます」
「栄養剤と思わせたのか‥それにしても筋注じゃないな‥これは」
東野麻美の差し出した腕に刺された注射器‥どう見ても
インスリンを静脈に打っているように見える。
「はい、静脈に打っているので急激に低血糖発作を起こして
早い時間に意識不明に陥ったものと考えられます」
「殺人に間違いないな。
それでこの女の身元は分ったのか?」
「以前極左の主流派に在籍していた活動家で、
まだ確認は取れていませんが、佐藤彩子と言う名ではなく本名は望月有子45歳。
5年前に起きた、成田空港の爆破テロの首謀者のひとりで指名手配されています」
「‥極東義勇軍か‥?」
「そうです。10年前の音楽ホール人質立てこもり事件も彼らの仕業だと
思われますが」
私の隣でスクリーンを見つめながら警視正が答える。
10年前の事案‥そうか、彼も無関係ではない。


東野麻美‥東野英明官房長の、戸籍上の妻だが‥
『アレが死んで私が悲しいとでも‥?』
という言い方‥決して仲むつまじい訳では なかったろう。

「警視正、官房長のことはどこまで把握している?」
「先日申し上げた通り、丸5年埼玉には足を踏み入れていません。
隣人も一切姿を見たことが無いと言っていますので事実上の破綻状態だったのでは
無いでしょうか」
「自分は殺してないと言っている」
「それは真実だと思います。
ただ‥官房長は10年前のことにも関わっておいでです。
そのことと今回の殺人事件は繋がりがあると考えるのが妥当だと。
‥法務省の刑事局公安課におられましたから、上からの圧力を受けて
当時の課長だった官房長が指示を出したという可能性は大ですが‥
刑事部長でおられた三枝長官は御存じでは無かったですか?」
「煮え湯を飲まされた大失態だな、確かに動きはおかしかった。
警察庁からきた審議官が現場で勝手に指示を出していたのに気づいたのが遅すぎた。
何らかの横槍を入れてくるなどと思いもしなかったんでね」
「法務省の事務次官が警察庁を度々訪れているのが確認されていますし、
極東義勇軍のリーダーからの政治献金を時の法務大臣が受けていたのは
裏では周知の事実だったようです」
‥あの伝家の宝刀のような機密書類か。
「きみの提出した書類も見たが、確かにあれは動かぬ証拠だな。
ということは‥全てを知っている東野さんの口封じの為に妻を殺害したと言う訳か。
ばかな、全く心の繋がりの無い妻を殺すと脅したとしても東野さんにダメージは
無いのにどうしてこんなことを」
「見せしめだと思います。次は本人を‥という」
「いくら隠そうとしても悪事はこういうふうにいずれ漏れるじゃないか、
永遠に隠し通せる偽りなんてどこにある」
「官房長は隠していらっしゃる」
「隠していたとしても‥もう、後は実行犯の確定と逮捕状を請求して指名手配だ。
贈収賄と政治資金規制法の件は東京地検に回せばいいだろう、
前法務大臣は病死しているから被疑者死亡のまま送検になるだろうが」
じっと自分を見つめる警視正の視線に気づく、
‥珍しいな。
「なにか他にも引っ掛かるのか?」
「官房長はどうして御夫人とそういうことになったのか気になりまして」
「契約だと言っていた。
それから‥好きでもない相手と結婚したと」
「ということは―
他に好きな方がいらっしゃった‥しかし、結婚せざるを得ない事情が
出来たのですね」
事情‥‥美しい警視正の横顔を眺めながら考えていた、
その事情を。

『あの女は私の弱点を突いて自分と結婚しなければならないように仕向けたんですよ』
彼がそう言っていた弱点‥
いったい‥何があったのか。
私は彼をよく知っていたのにそんないきさつはちっとも知らなかった。
「弱点なんかあっただろうか、あのひとに。
できるひとだったし、人間関係も特に問題は無かったはずだ。
彼に裏があったのなら私は裏の事情まで知り得ることができなかった、
上っ面だけの付き合いだったと言うことだ」
「官房長は‥お気の毒ですね。
傍におられた長官が全く理解していらっしゃらなかったとは―」
痛いところを突かれた。
「私はひとの心理を考えるのは苦手だ。
言葉で伝えてくれてもよかったんじゃないか‥?」
「言葉で伝えたくても伝えられないことがあります。
それは相手の心を思いやって‥慮って‥伝えないという意味も含みますが」
「どういうことだ」
「それは‥私の立場では申し上げられません」
「きみは案外ケチなんだな」
「‥‥」
あ、固まっている。
「それから―きみの提出した書類について‥特に改めて問いただしたいところは
ないから、それだけ言っておく」

出処なんてどうでもいい、あの事案を解決しないと前に進めないだろう、
官房長も。

‥たぶん、私もだろう。


続く

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2011/05/16 00:37 |  |  #  edit

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